「熱い」

「Hun?ああ、暑いな。Hotだな」

「(何で今二度言ったんだ)いや、伊達。アンタの息が熱いんだけど」

「俺の息?そりゃあお前、興奮してるからだ」

「そういうのって普通言わなくない?」


じーわじーわじーわ、じじじじじ


「蝉、五月蝿いね」

「一緒に啼けばいいだろ、手伝ってやろうか?」

「えーやだよ暑苦しいな。それに字、違うし」




夏の暑い日




縁側に座ったは、俺の抱擁を受けたままで本当に迷惑そうな溜息をつく。 だがこんなのは日常茶飯事だ。Every day、Every timeこんな扱いを受けてりゃ次第に普通に思えてくるだろ。 俺もそのクチの人間だ。なんてこたぁねぇ、単なる照れ隠し、そうだろ?(面と向かって聞いたことは無いが)

俺ん家に昔から遊びに来ていただが、本当に女っ気がねぇ。今でもホラ、見えるだろ?あの白い足。 まだ初夏で日に当ってない足が惜しげもなく短パンから伸びて、華奢な体の前で胡坐をかいている。 俺っていうBeastの前でだぞ?
嗚呼、眩しいじゃねえか、畜生。


「ちょっと、ね、離して」


少しズボンの前がきつくなりそうな俺の思考なんてモンは全く知りもしない様子で、の指が俺の腕に触れた。 じわりとの指の温度が俺の腕に伝染して、消えていく。 暑いのはお互い様だ。俺も暑ィ。それならなんでこうしてるかって?見てるだけじゃ持たねぇからだよ。 I can’t stand! というか、我慢できる領域は暑さの所為かずっと狭くなっちまってる。 なぁ、このままもっと汗をかくのも粋じゃねぇか?(…なんて言った日には一週間口聞いて貰えねぇだろうな。)


「いいや、離さねぇ」

「熱いってば、やだ、離して」

「もっと可愛くおねだり出来ねぇのかい?チャン」

「出ー来ーまーせーん!」

「…仕方ねぇな」

「伊達?」


ああ、だからそんな無防備な顔で俺を振り向かないでくれ。

暑さで上気した体に気だるげな視線、それに…解ってないんだろうが、お前このアングルからなら下着見えてんだぞ。 わかるだろ?俺は男でお前は女なんだ。そして俺は狼でお前はか弱い小鹿。 いくらお前が俺のコトをそういう風に思えなくて、いつまでも俺のコトを『伊達』と呼んでいたとしても、 俺からすればお前は立派な据え膳なのであって。

至近距離で俺の視線とかち合ったの目は何度か瞬きをしてから、じっと俺を見つめ返す。 今やの一挙手一投足が俺を誘っているような気がして、俺はから目を逸らした。 また、の方から鼻に掛かったようで疑問じみた声が上がる。 だから、マジで頼むから、そんな風な声を出すな。 その桃色の唇で話すな。これ以上俺を変な気にさせてくれるな。You see?Baby.


「伊達〜?どした、暑い?」

「Ahそそ、そ、そうかもな」

「はは、変なの!いいよ、解った」

「!なん、」

「良いもの持って来たげる、待ってなさいね、伊達君?」


行き成り無理やりに俺の額の髪を掻き揚げて、驚いた俺の顔を満足そうに眺めてから、は奥の方に 引っ込んでいった。そういう行き成りな行動でどれだけ俺の理性のライフラインが削れて行くのか、 いまいち解ってないようだが…それにしても『伊達君』。悪くない響きだ。教師と生徒の様なニュアンス。俺は年上でも 全然構わねぇぜ?先生…とか言ってみたりしたい。 俺の下で困り果てるの顔を一度で良いから拝んでみたいと思うのは きっと俺があいつを好きで気が狂っているからなんだろう。そうだ、今日は小十郎も帰って来ない事だし、いっそ 今日のうちにも組み敷いてしまえば…


「伊ァ達!ホラ、アイス持って来たよ」

「冷て」


もんもんと宜しくない、いや、思春期の青年ならば誰でもするような妄想に浸りつつあった俺の頬にHitしたのは この時期が一番の売れ時であろう、棒アイス。丁寧に一本一本ラッピングされたのなら見慣れていたが 昔の香を漂わせる紙袋のそれには自ずと食欲が湧いた。小さく礼を言って受け取ると、はもう封を切って 丁寧にゴミをまとめているところだった。バニラ味だったのか。Un?いや、俺のはチョコか?


「私のがバニラで、伊達のがチョコ」

「一緒にしなかったのか。Why?」

「売り切れちゃってて、最後だったんだよ、どっちも」


すごく運が良かったよね。
は上機嫌に笑いながら俺に早く食べるよう促した。 俺としては売れ残った1本だけのアイスを2人で食べるぐらいが『運が良い』んだが、そんな事はまぁ、 良い。なぜなら俺は目の前にある本当の『大吉』に遭遇したからだ。Of course. そうだ、よくわかってんじゃねーか。今俺と同じ想像しなかったヤツはもう男じゃ、無ぇ。


「うわ、ちょっと、コレすぐ溶ける」


いや、いいから舐め続けてくれ、と言いたいのはもはや本能のなせる業だ。

さんさんと注ぐ日差しに驚くほどの速さで解けていくバニラの雫を絡め取る赤い舌。 時には手の甲にまで侵食するその液体を辿る口元と、伏せ目がちな瞳。 たまに聞こえる微かな吐息。目の前で一生懸命に冷菓を平らげていくは 俺の目を最高にひきつけた。

ここであの想像をしないほうがオカシイ。

しかしいよいよ俺の体がヤバイ。本当にヤバイ。だが今の状態で何かやらかしたら 絶対に嫌われる。もしが俺だったとしても絶対に引く。折角アイスで冷たくなったはずの体(主に 前方…Can you see?)が僅かだが再熱していく。心地良いようで、現実問題そんなわけの無い妙な快感が 鎌首をもたげんとしている。


「ね、伊達?どうしたの先刻から。チョコ嫌いだった?
……あ、また零れた。もう、困ったなぁ、ベットベトじゃん」

「………」

「そうだ!お手拭持ってくるね〜」


は太ももに落ちた白濁(というとスゲェ卑猥だな)を指で掬った。
柔らかい内股の肉がふんわりと沈み込み、次の瞬間には元通りになる。

It is already a limit.

1度気になるとトコトン気になるのが悲しいかな人間の性とか言うヤツみたいだ。
今になっては最初には目にもかけなかったの腹チラやら足の白さやらふんわり漂う髪の香りやら細い手首やら ……ああ、俺、生物部の明智みたいだな。(HA!笑えねぇ話だ)(また下着が見えてるぞ) とにかくそんな些細なもんまでが気になるようになって しまった俺を止められる物はもう何一つ無いって事だ。


「!伊達、」


俺は立ち上がろうとしたの手を思い切りひきつけてアイツの顔を正面まで持ってくると、 有無を言わさずに後頭部に手を廻し、口付けた。少々手荒で、歯のぶつかる音がしたような気がしたが 大切なのは今、この場で俺の妄想が叶ったと言うことだ。 思ったよりもずっと小さい両肩に手を廻すと小さく跳ねたような振動が伝わる。なんだ 可愛いところもあるんじゃねーか、。いや、お前は常に可愛いと言えば可愛いんだが。 可愛いと言うよりは扇情的というか、なんというかだな。


「だ、だ、だて」

「今は黙ってろ、You see?」


軽く開いた口腔に舌を差し入れてみると、また肩が跳ね、少し触れた舌は奥の方に引っ込んでしまった。 俺がそれを奥まで追いかけて行って吸うように絡みかけると、困惑して苦しそうな、くぐもった声が響く。 それと同時進行で抵抗するように俺の肩に掛かったの手に力が入る。 その非力な抵抗や声に尚興奮する。大丈夫だよな?何の変化も無いよな?俺の体。(じ、自信無ぇ…)

ぐっと後ろに力を入れると、の体は面白いぐらい簡単に傾いた。
薄く開いた俺の眼に入ったの表情と言ったら、ひどく官能的に見えた。
男はやはり、少し苦しがっているぐらいの表情に昂揚を感じるのだろう。

俺は口付けたままの短パンの一番上のホックに手を掛けた。
…本当にこのままFinishしちまおうか、








バシッ!

「!!!」


両目に火花が散ったと思うくらいに強烈な平手が俺の頬に衝突した。
続けて脇腹の辺りにこれまた強烈な蹴りが一発。更には禁断のZoneにもう一発。 さすがにソレはやっちゃいけねぇぜ、。それは男にとっちゃ死刑だ。 つまり俺にとっても死刑だ。超、Very、Best、痛ぇ…。

虫の様に丸まって悶え苦しむ俺の上からの声が聞こえる。


「だ、変態!馬鹿!い…いきなり何すんのかと思ったら、あ、あんた!
発情期!小指を角で打って死んじゃえ!伊達なんか無能になって死んじゃえ!
も、もう帰る!あとおだいじに!ごめん蹴っちゃって!馬鹿!死ね!」











ばたばたばたばた、きぃー、ばたん!











じーわじーわじーわ、じじじじじ











「クク…動揺してカワイイこった」


こりゃあ一ヶ月は口聞いてもらえそうに無ぇな。