「だってねちゃん。良く考えてみてよ」

「この期に及んで俺は何について考えれば良いんだ…?」


同僚

友情





寝室


「だからこれにのっとって、俺様はちゃんを、」

「お前本当に何かの精神病じゃないのか?仕事のストレスか何かか?
女が足りないなら俺がお金やるから、城下の遊郭の女の人でも抱いて来い?」

「あっは!素で受け止められちゃった」(コツーン☆)




春=盛り=ねぼすけ




寝ぼけ眼で起き上がって頭を掻いた俺の両端には、いつもの様に幸村が隣で丸まって控えめに、 そして佐助がいつの間にか腕枕をして眠っていた。 まさか俺、あの腕枕で快眠していたのか?ふ、不快だ!なんだそれ不快すぎる! 超☆不快!


「う…さぶっ」


布団の中は青年どもがギュウギュウに詰まって寝ているからとても暖かいし、たまには暑苦しいぐらいだが 、布団一枚をはさんで外の空気は驚くほどに寒いんだ。春眠暁を覚えずって言葉があるように、 どちらかと言わずとも、布団の中でごろごろしている方が良い。でも俺の目は覚めてしまった。 毎日感じるその温度差に身を震わせながら布団から出ようとすると、意思に反して一瞬で視界が反転する。

上を見上げると佐助がいた。どうやら俺が布団の中に冷気を送り込んだ所為で起きてしまったらしい。 いっそ一生寝てればいいのにとか思ったけどそれはまぁ、口に出さないでおこう。 だって今の状況じゃ何されるか解ったもんじゃねぇし。


「…質問その1、佐助君は何をしているんでしょうか?」

「寒そうなちゃんを暖めてあげようと思ってま〜す」

「そりゃ…ハラワタ煮えくり返って熱くなったから大丈夫だ」

「うわ朝から随分とおっかないこと言ったよこの子」


そーんなこと言わないの。と佐助は笑顔だが、俺の上からは退こうとはしなかった。 佐助に両手を押さえつけられている所為で身動きが取れなくなったのを、ほんのりと 昆虫採集の蝶々のようだと思っていると佐助は行き成り顔を近づけてくる。
(朝から盛りのついた猿だこと…!)


「な、ちょ、佐助」

ちゃん、お早うの接吻して」

「ヤダ、絶対」

「え〜いいじゃないの、ちょっとだけだから」

「NO 接吻」


麻薬撲滅のフレーズっぽく拒否したのにも関わらず佐助は近づいてくる。 大体お前、お早うの接吻て。起きた状態で夢でも見てン だろうか。なら俺がお前を布団という名のリングに沈めてやろうか…?


「困ったねぇちゃん、今日はだぁれも邪魔してくんないよ?」


佐助の笑みが恐ろしいったらない!

頼みの幸村は爆睡中。ちょっと寒いのか、布団を巻き込んで丸まっている。
可愛い……が!起きろ、起きてくれ、起きてください本気で!そしていつもの 破廉恥節で前田夫婦を破廉恥だと罵ってくれ!(ちゅうい: じっさいのかれはそんなことはしません) (←友情出演)

危険です!俺と変態との距離おおよそ10センチ!
あと7センチ!5、4、3……カウントしてんじゃねーよ!


「さ、さすけ」

「大丈夫、怖くないから」


だ、大体!大体だ!

キスなんてどうすれば良いか分んねーよ!

そこらへんの乙女な町娘なら、その低っいバリトンの子安声でメロメロだろうが、 俺は男だぞ!?間違えてもそんな雰囲気になるわけがな、い………意外と睫毛長いんだな、佐助… って違うっつの!何ちょっとときめいた風になってんの俺!?


「待て。ホントに待て佐助、頼むから」

ちゃん。そんな顔されると俺様我慢きかなくなっちゃうよ?」


人の言葉が通じないのか、それとも耳が凄まじく悪いのか。
(きっと前者だ、前者に違いない)

佐助は眉を上げて、ちょっと困ったような、哀愁のあるような、絶妙に格好良い (悔しいが認めざるを得ない)表情で俺の髪に触れ、手櫛で梳いた。 しかし言っておくがそんなことしても俺はときめかんぞ。 それどころか俺は、やっと自由になった方の手を佐助の顔につっかえさせた。 そして持ち得る力、全力でもってして、腕を伸ばす。これでやっと俺と変態の 距離は許容の範囲内になった。

抑えられたのが口であった以上声も出せず、驚きに目を見開く佐助。
これ以上近づいたらお前の顔の骨格をも変えてやるぞ全力で。


「ったく、朝から盛り過ぎなんだよ…」


自由な方の手で佐助の顔を抑えて支え棒にしたまま、溜息をついた。吐かないでいられるか?この状況で。 朝から唇の危機だぞ?起きて欠伸もしないうちからコレだぞ? 戦国時代の側女(俺は違うけど)ってこんな感じとは聞いてたけど、本当に大変な生き物なんだな… 俺だったらストレスで死んでるよもう。

そんなこんなで、俺は今のところ変態の脅威から逃げられたのだが…











「………」

「…………」


ゆ、幸村がめっちゃこっち見てるー!!

幸村はしっかりと俺と佐助が絡み合っている(ヤな表現だなコレ!)のを、 布団を抱締めながらしっかりと見つめていた。しかし可愛いなオイ! 布団抱締めるとか、お前ソレでも一武将か?

恐らくは寝ぼけているのだろう。そうじゃないと此処まで黙っているわけが無い、っていうか 目が寝てる。マジで寝てる。これ、もうちょっと黙ってればまた眠っちゃうんじゃないかな。 どんな想像すれば良いのかって言えば、そう、あんな感じだ。 子犬が今まさに眠りにつこうとしているようなニュアンス(?)だ。


「佐助……幸村が、幸村だ」(混乱)

「う、うん」


佐助は恐る恐る返事しながら身を引いた。しかし未だ馬乗り。(殺してやりたい)
どちらにせよなんか気まずい気分の俺達はなるだけ幸村を完全に覚醒させないように 小声で話し合う。いちゃこいてんのを子供に見られた熟年夫婦はきっとこんな気分だ。 『じ、次郎や、起きてたのか』見たいな、な!


「とにかく旦那を眠らせないと」

「…そう、だな」


え、なんか俺達同罪に問われてるけどなんで?

上手く表現できない(↑してる)不満を抱えて俺は幸村に挑戦することになった。
幸村は依然としてボケーっとしたままでこっちを向いていた。寝て…ないな。そうだよ、寝てない。 中途半端に起きてるんだよ。赤ん坊は半目で眠るって聞いたけどこいつ立派な青年だもん。 つか本当に脳しんとうでも起こしたんじゃあるめぇか、真田幸村よ。


「ゆ、ゆきむら…?」


いつかの勘助みたく返事が無い。
(良いさ良いさ!もう慣れたよ無視には!)

俺のオドオドした声掛けに幸村はしばし反応しなかった。 ていうかコレで幸村が覚醒したら何を思うんだろうか。 佐助はまだ俺に馬乗りだし。(ほんっっとに殺したい)


「ていうことで佐助、お前其処退けよ」

「えーやだよ何で?ワケわかんない」

「お前もう常識さえわからなくなったのか…?」

「また?俺様また心配された?!
でもどかないよそれが俺様の忍道だから!

「なぁ、ここにきてNARUT〆(←伏字)のパクリか?
…確かにお前はジャパニーズ☆忍者だけどさぁ」

「もう何で心配さえれてるか判んないんだけど?!」


精神的に9999のダメージを負った 佐助は酷いよ!と言い、顔を覆いながらの隣にゴロゴロと転がって丸まった。 どうやら佐助は同情に弱いらしい。は佐助を撃退した!弱点ゲットだぜ! (お馴染みの音楽と一緒にどうぞ)


「で、ゆきむら……ってぅおう!」


幸 村 が 泣 い と る !!


「ちょっとー!なんで泣いてんの幸村!?」


幸村は依然とこっちを見ながら、眉をハの字にしてポロポロ泣いていた。 すん、と鼻をすする音が静まった空間に響く。 や、ちょっと人間らしい表情出てきたから少し安心したけどさ、何?何で? 何か悲しい夢でも見たのか?それともNARU〆(←伏字)Oの台詞を真似されたのがそんなに悲しかったのか?
泣くな!泣くなってば!クソ!可愛い!


、どの〜…」

「おう、どうした幸村?何か嫌な夢でも見たのか?」

「ゆ…夢で、ずずっ」

「うん?夢で?」(騒音が酷いな)

「さ、さすけと、殿が、から、か、絡み合って」

「そうか……それは最高に嫌な夢だったな、幸村」


うわ、ギリギリのイエローラインで助かった。

とにかくは『嫌な夢』で終わらせるべく、俺は幸村の頭をなでた。
殆ど引付らしきものを起こしながらも幸村は目を閉じる。目を閉じる反動でまた一粒涙が落ちる。 てか本当に可愛い。なにこの生き物。なにこの青年武将。やばいって。やばすぎるって! 本当ならこの役割って逆だと思うし!女の子が泣くべきだと思うし!(俺は違うけどな!)


殿を、と、と、取られた、と、思った」

「よしよし。もう大丈夫だからな」


ゆるく自白を始めてまた泣き出す幸村。俺はそんな乙女な青年の頭をわしわし撫でながら とにかく泣き止むように声をかける。確かに横に寝返りは打ったが、これ寝転がったままやってんだよな。 佐助が俺の背に張り付いてメソメソ言ってるし。 (この部屋にいる三分の二が泣いてるってハナシだ)


「佐助も、ホラ、起きようぜ?」

「だってさぁ…」

「メソメソ言わない。男の子の日だろ、今日は」

「へへへ…ちゃんが言うなら」


撫でてやると直ぐに元気になった。(現金なヤツめ)
今朝の俺はまるでこいつ等の母さんみたい……や、こんなデカイ子が居て堪るか。 年齢差なんて殆どないし。第一父親は誰だ?政宗?ありえない、そんなことがあったのなら俺はもう 自害してやる。でもまぁ小十郎さんならイケルかも…じ、冗談だっての。

佐助を起き上がらせて、俺も起き上がると、幸村が袖を引く。


殿、もっと傍に」

「?」


俺は一瞬だけ目を瞬かせたけれど、直ぐに幸村に近づいた。
幸村は引っ込み思案だから、きっと何か言いたいことが在るんだろう…

ちゅ

――と思いながら耳を近づけた俺の頬に何かが触れて、離れる。
大体何が起こったのか理解できていたが、もう一度幸村の顔を見たとき、 もうアイツは深い眠りの中にフォールインしていた。これじゃ怒ることも侭成らない。 というか寝ぼけ幸村に何を言っても、意味のないことだろうな。 畜生、キモチ良さそうに眠りやがって。もしコレ、幸村の策謀だったら俺、認めるよ。 幸村は毛利元就もビックリの策略家で、今川の家臣も平伏す演技派だって。

ていうかこの終わり方、デジャヴなんだけど…?


・・・・・・


「はぁ、今朝のコト?何でござろう?」

「もういい、もういいよ」(遠い目)

「え、殿!?某、今物凄く失望された気が!」

「やー、違う違う。なんかこう…勘繰りつかれたというか」

「(疲れた?)何の事でござるか!?殿!殿ー!」


鍛練場を出て行くを、幸村は追いかける。
(それを見ていた佐助は、ちょっと馬鹿にした笑みを浮べた。)


「待ってくだされ殿!」

「あーもう黙れこの馬鹿!勝手!天然!

「し、しりとり!?」


やっぱり天然は恐ろしいと思う今日この頃である。