(あれに見ゆるは独眼竜!なんと、なんと数奇であることか!この熱き心まさに今燃えん… ぅお館様ぁぁ!この幸村果たして見せましょうぞぉぉ!)

(ちょーっとまてよ、こっちにゃこの人質が居るンだぜ?いちいち旦那が出ることも無いでしょうに。 ていうか敵将軍は大将にまかせるんじゃなかったのかよ?ここはコイツを使って一時 むごっふ!

(死ぬな佐助ぇぇーーー!)







03 戦国バサラ







「退け!真田幸村!」


幸村は呆気に取られていた。

自分の部下と逢瀬をしていた女子(なんと武士の口調であった)(しかも自分はおなごでないとも。) が、ほんの一瞬の隙を突いて自分の前に躍り出たのだ。
しかもさらに驚くべきことには、真田十勇士がひとり、猿飛佐助がその少女のそばで 鳩尾(先程この少女に肘で突かれた)をさすっていることだ。

あいもかわらずに乱雑な口調で自分に『退け』といった少女はいつのまにか自分の 二槍をその手に持っていた。あまりに不似合いだ。
首筋に僅かに血が滲んではいるものの、その服には僅かな血の飛沫さえありはしない。
しかしその手に持つは元の色よりも数段濃くなった赤の二槍。

その表情は真剣そのものであって、けして庇う振りをして隙を突き逃げてしまおうなんてことを 思っているようには見えない。
どちらかというと、本当に自分達を護ろうとしているような。 (意志の底光りする目がお館様に似ている気が、する)

なーんだあの子伊達軍じゃなかったんだははは。
佐助が(腹をさすりながら)全く 悪びれる様子も無く呟いたことで幸村の意識はハッと我に戻った。
そして気付いた。あの少女は戦うべくして此処に居るのではないのだと。


「お待ちくだされ!」


幸村は前に立つ少女を引きとめようと手を伸ばした。
少しだけ、ほんの少しだけ破廉恥であるような気がしたが、そんなことはもう関係 はなかった。

今ここにいる少女は(どういう流れでここにいたったかは分らないけれども) この戦には全く関係ないのだ。そんな少女が眼前の独眼竜と会いまみえてしまえば、 もう結果は目に見えている。
女や子供が戦で散っていくのは実に見るに堪えないものなのだ。


「この戦は武田軍と伊達軍の物、そなたの関与することにはござらぬ!
伊達軍でなきことは認め申す故、即刻この場より逃げてくだされ!」

「馬鹿も休み休み言え!今逃げたって核爆発には巻き込まれンだよ!
畜生…熱唱びわ欲しかった…!

「琵琶が欲しいのでござったら、この後に準備いたす!それ故」

「ぜんぜん違ぁーう!琵琶なんていらんわ!俺はな、俺を守ってるだけだ!」

「ま、守る…!?如何様にして己を守ると仰すのだ!」

「幸村、わかんないのかよ。おまえがあの独眼竜と戦ってみろ、
周りが見えなくなるのなんて日常茶飯事なんだろーが?
そんなのあまりに危険だ!」

「そのようなことを何故知っているのだ!某はそなたのように面妖な女子と
戦話をした 覚えは御座らぬ!…もしや盗み聞き!?某が好きだからと言って!

「そーいう事じゃねーよ!バーカ!バーカ!!ブァーカ!!」

「馬鹿と!戦を馬鹿事と申すか!!なんたる…!」

馬鹿はお前だよ!何コレ、会話になんねーんだけど!」











「オイオイ、仲間はずれはあんまりなんじゃねーか?」











「旦那!危ねぇ!」

「ぬおっ」

「ひぎゃ!」


刹那、ひゅう、と空気を切る音がしたと思うと、そこには 炎天下に銀の光沢を惜しげもなく放つ刀が食い込んでいた。 その場に居たのなら、間違いなくか幸村、どちらかの腕が飛んでいただろう。 躊躇の欠片も無いような一線を放った刀を鞘に収める蒼い服の男。 は佐助の小脇に抱えられてその男を見遣った。

腰に光る六本の切れの良さそうな爪。濃い青空の装束。
何にもまして、夜のそれを模った様な金の三日月。
答えなんて、たったひとつだ。


「いきなり不意打ちなんてすいぶんと卑怯じゃないの、伊達の旦那」


体勢を取り直す自分の主人を横目にヘラヘラと笑いながらも、 佐助は張り詰める殺気をその男に送った。 (はまたもや拘束されている)(それも小脇にかかえられて。) しかしその殺気に物怖じすらせずに、ゆらりゆらりと此方に向かいながら Ha、と鼻で笑うと、独眼竜こと政宗は馬鹿にしたような表情で目前の 忍に語りかける。


「こりゃ不意打ちじゃねーよ。俺は待っててやったんだ。 お前の上司もたいしたもんだな?総大将が来たってのに 夫婦漫才たぁ…It's like stupid.

「いっらいすとぅ…な、なんと申した独眼竜殿?」

「HA!そうそうその顔だ真田幸村!そういう顔をいうんだよ!」

「某のような顔を?」


ようするに政宗は走ってやってきた後に健気にも目の前の口論が 終結するのを待っていて、しかも無視されてちょっと傷ついているということなのだ。 (こうなるまえに小さく何度か話しかけたらしい) 英語がわかるはその語の意味がわかったけれど もう目を付けられないように、『何言ってんだろ』見たいな 顔で佐助を見る。
すると佐助はの視線に気付いて其方を 向くとひそひそと語りかけた。


「何言ってるかわかる?あんた」

「…分ってたら何だよ」

「俺様にだけ教えてよ、ね?」

「分らん、絶対分らん」

「ったく可愛くねぇなーもう」


可愛くなくて結構だっつの。
そう呟いたと未だに異国語について 口論をする戦国名高い将軍達(どうして戦わないんだろうか)を両眼に移して 佐助は適確に状況を判断した。
どうやらそんなに事を急ぐ必要はなさそうだ。

佐助はそのあとそうだ、と言葉を付け足した。


「『夫婦漫才』って旦那とアンタのことだよね」


一応理って置くと、 彼はほんの親切心からそれを述べたのであって、けしてを 『奥さん』だと言ったわけでも、馬鹿にしたわけでもない。 (彼の言動はいつでも人を馬鹿にしているが。)
しかし次の瞬間、佐助に捕まっていたはずの は猛スピードで目の前の馬鹿武将(おっと、失言だなこりゃ)達の下へ爆走していたのであった。



















「ぬおぉ!段々と分って参った!」

「H a!どーだか!じゃあ言ってみろよ」

「『すつぴっと』とは、ようするに某のような」

「おう、お前みたいな?」


「お前みたいな馬鹿のことを言うんですよ真田君」


奥州の伊達、武田の真田といえば世に名高い戦国武将だ。 その武将達は、背後からの声にぎょっとして、目を見開いた。 気を張り詰めたこの戦場で背後に忍び寄る人影に気付かないわけがない。 まぁ、彼等が熱中しすぎていた所為かもしれないが。 (気付いたら2人で便所座りをしていた)

幸村と政宗はほとんど同時に振り返った。
その視線の先には仁王立ちになって張り付いたような笑みを浮べたが立っている。
笑顔自体は満点なのに、笑顔の後ろになにか恐ろしいものが、見える。


「そ、そなたは先程の女子!」

「うおーい…またソレか!女子じゃねぇつってんだろが戦馬鹿!」

「某はお館様の戦の為なら馬鹿にもなろうぞ!どうだ!」

何で今『どうだ』っつった?!テメェの自慢は訊いてねぇよ!てや!」

「ぬぉ!ふ…不覚!」


未だに便所座りの幸村の肩を突っ込みがてら押して、起き上がりこぼしよろしく 後に転ばせる。
政宗は全く状況がつかめていないような顔で、 『うぬぬ』と声を零しながらごろりと転がったライバルを見たあと続けざまにを見た。

もたもたと起き上がり始めた幸村の肩をもう一度押して倒すと、はやっと 政宗の方に目を向けた。(不覚ぅぅぅ)(コイツ、真田に恨みでもあんのか?)

政宗は産まれてこの方、ここまで口の悪い女を見たことが無かった。
自分では女でないと言い張っているものの、政宗にはどうみても 女にしか見えなかったし、背の低さもそれに妥当だ。 その割には武田の隠密(の割にゃあ忍んでねぇが)の拘束からも脱出してここに居る。


「Hey、真田の知り合いか」

「知り合いだって?ンな訳ないだろ、したがって夫婦でもねぇ
撤回しろ、俺は夫婦漫才なんかして無ぇ。唯の漫才をしていたんだ」

「唯の漫才なら良いのかよ」


居丈高、かつ不機嫌そうに話す相手の態度がすこし気に障ったのか、政宗は片眉を上げた。
すっと便所座りから立ち上がり腰元を叩いて埃を払うと、頭ひとつ分位 低いを見下した。
そしては政宗を睨み上げる。

両者間に火花が散った。

火花散る二人の横では幸村が転がり疲れて大の字になって倒れて、 空を見ながら『良い空でござる…』と呟いていた。 その後佐助に頭を叩かれてから、立たされていた。 (もっと危機感もってよね、旦那)もはやまるで上下関係など存在しないようだ。


「Ha−n、わかった!まだ恋仲なんだろ?
そのわりに 戦に引き連れてくるとは随分な熱中ぶりだな。」

「アァン?ふざけろ!熱中も何も俺は本当にアイツとは初対面で」

「♪〜愛されてるぜアンタ、自信持てよ!」

「なんで此処に来てからまともな会話出来ねぇかな俺」


の切実な願いは全く気にしない方向で、 真田幸村!お前も隅におけねぇな!と、政宗が言うと、幸村は コレでもかというほどに赤面してあわわわ、と口を開閉させた。


「そ、そのような事はござらぬぅ!」

「照れンなよ、アンタの女が見てんだぜ?」

「なんと!見てくださるな、そこの女子!」

「ちょ、お前俺の名前もしらねぇクセに照れんな!」

「なぁ正直になれよ、アイツだってああ言ってるんだ」

いやアイツが何を言った。明らかに拒絶だったろう今の台詞」

「男の為に必死になっちまって…pretty なやつだな、気に入った」

「え、何言ってんの独眼男!おま、熱中症か!?」


恋の始まりを察知した政宗を内壁 にして、頬を染めた幸村と不機嫌そうに眉を顰めたが 並んでいる気味の悪い(特に武将達が)光景を見ながら 佐助はこんな上司いやだ…と口元を引き攣らせた。

―が、その後直ぐに佐助はその場所から飛びのいた。 刹那、風を切る音がしたかと 思えば、続けざまにキン、と刀をしまう音。その流れるような動き、 そこらにいる一般の兵士よりはずっと強いヤツが居る。佐助は自分の得物を持ち直しながら 、後ろの三人組(まだ口論している)(旦那頼むから給料上げてくれ)を見たが、まだ 気付いていないようだ。


「ここは俺様がやるしかない…か?」


幸か不幸か今回の戦では偵察役だったので全くもって体を動かしていなかったのだ。
どうやら動き足りない体が疼いている様で、心拍の音を聞きながら めんどくさそうな台詞とは裏腹に佐助は戦いに身を固める。

けれど相手はその佐助の様子を気にすることも無く、 片手を前にだして言った。


「残念なことに俺は政宗様を呼びに来ただけだ、忍と戦う気もねぇ」


悪いな、と心にも無いような顔で言う男の顔には目立つ太刀傷があった。
髪を後に流したその風貌は当に伊達軍のそれだったが、その身にまとう雰囲気には 貫禄が滲んでいる。
終止睨んだ瞳を受けながら、佐助はハ、と乾いた笑いを溢した。


「戦う気も無いって言っても此処は戦場だ。見逃すわけねぇだろ」

「俺を止めるか…そんなに死に急ぐ必要もないとおもうぜ?」

「その言葉、そんままアンタにかえすから。とっとと帰りなよ」


短気なところは気が合うみてぇだな。
どーだか。そんなに油断しちゃっていいの?アンタ。
お前に気を張る必要もねぇ。


「小十郎じゃねーか、此処で何してんだ」


思っても見なかったような政宗の声でこの二人の言葉の交わしあいは中断された。
政宗様、と無意識に口に出したこの男を背に佐助は政宗の方を向く。
(佐助!なんと無防備な)(わかってるって旦那)


「独眼竜の旦那ー、お迎えが来てるぜ」

「Ah?お迎え?どういうことだ小十郎」

「政宗様、此度の戦は両軍和解の上撤退となりました」

「両軍和解…俺抜きで、か?」

「武田方も総大将は不在でございました。我が軍はこの小十郎が代行を」

「双方代行たぁ、武田のオッサンもまぁ、勝手に異数 なことしてくれたもんだ」

「して、どうなさるか政宗様」

「どうって、仕方ねぇだろ」


帰るぜ。ゆっくりと兜を脱ぐと政宗はたるそうに肩を鳴らした。
は後に黙って立っている男(小十郎だとか言ったけれど、 本当にそうなのだろうか)を見ていたが、眼が合いそうに なってたのでさっと目を移すとそこに居たのは政宗だった。
ばっちり、と目が合う。
その数秒後には政宗はイタズラを思いついた子供の様にして笑んだ。


「Un…何だ?帰って欲しくねぇなら正直にそう言いなho ney」

「ハニーて言うなクソ眼竜、早く帰っちまえ」

「照れ隠しか?マジで可愛いなアンタ、本気で連れ帰っちまいてぇ。」

「俺の意思は既にシカトかよ」

「なぁ。小十郎、いいよな?俺がちゃんと室にして世話すっから」

「この小十郎は経緯をしりませぬ。政宗様が思うようになされよ」

「Yeah!許しは得たぜ!来いよ女、可愛がってやる!」

「女じゃねぇっつってんだろ!馬鹿!もう知らん!」


はそういうと両手を広げたまま寄ってくる政宗から逃げるように して佐助の後ろに隠れた。
「何なの」と声を溢しそうになる 佐助をしっかりと両腕で固定して政宗との壁にする。


「え、ちょっと、何してんのさ」

「猿飛佐助!頼むからかくまって!犯される!」

「犯されるなんてヤラシいこと言わない!女の子が!」

「女じゃない!けど、嬲られる!」

「なおさら悪い!!」

「じゃあどう言ったら良いんだ…ってきゃぁー!」

「どうしたhoney、逃げなくたっていいだろ?」

「やだ!逃げるのなんて嫌だからに決まってんだろ!地獄に落ちろ!

「(今随分とまぁ女の子らしい声出したなこの子)」


そしてと政宗は佐助を壁にヒートアップしてぐるぐるとまわりはじめた。

の表情は嫌悪にゆがんでいるが、政宗の表情たるや最高の得物を目の前にしたような 笑顔である。佐助はの手に確りとつかまれているので壁としてちゃんと役目を果たしていたが、 ぐるぐると廻っていた。

それ自体は全く苦ではないのだが、政宗の表情がどれだけぐるぐる廻っても 目の前にあるので、本当に泣きそうになった。(だって気味悪いんだぜ!本当に!)


「ぉわ!」

「HA!捕まえたぜ女、観念しな」


回転が止まったかと思うとの腕は政宗にがっしりと掴みこまれていた。
は思い切り掴まれた腕を解こうとしたけれど、戦慣れした人間の力には適わず 凄く元気のいい握手をしたような形になった後、 挙句の果てに力なくだらりと腕を下げる。
恨めしげに見上げる視線の先の政宗は 勝ち誇った笑みを浮べた。


「奥州も悪いところじゃねえんだ。そんなに緊張することねぇよ…ま、俺がアンタの緊張ぐらい ほぐしてやるけどな。だから俺の胸に飛び込んで来い?

「うわーなにこれずっげぇムカつく」


政宗は少し強引にの腕を持ったまま、後に控える小十郎の方へと向かった。
小十郎が連れてきたのであろう白馬が鼻息も荒く『早く乗れ』と急かす。

は実際このまま何処に行くでも無かったので、 数歩先にいる美しいたてがみの馬に乗って奥州に行くのも悪くないと思ったし、 何より暑くてしかたないこの真裸の地表から回避できるのなら、寧ろ驚喜すべきでないか と思っていた。(正室、とか言う件はあとでなんとかするつもりで)



















「待っていただこうか、伊達政宗」

「ひぇい!」


それを止めたのは他でもない幸村だった。
幸村が勢い良くの余った腕の方を掴んで引き止めたので、は 勢いも良くガクンとなって(しかも変な声を出してしまって)幸村のほうを向いた。

そこにいたのは先程までの幼子のような純粋さを持った幸村ではなかった。

最初に出会った時とはまた違う、静かな真剣さがジッと政宗の後姿を見つめる目からうかがえる。
しっかりと、だけれど固くつかまれた腕から移る温かみには幸村が引き止めたことを実感しながら 次の言葉を待った。


「Ah?何のつもりだ、真田幸村。」

「その女子、どうぞ此方へ渡していただきたい」


と真剣に言う幸村に政宗の表情も真剣になる。
首から上だけ幸村の方を見て、気に入らないとばかりに返した。


「テメェがよく言うぜ、この女とは関係ないンだろ?
だったら俺が連れて行っても 何ら差し支えねぇハズだ。Don't disturb.

「無関係というわけではござらぬ。」


そう言うと幸村は一拍置いてから佐助、と口にした。
すると佐助は流石は忍と言ったところか、音も立てずに幸村の一歩後に控える。 佐助はと目が合うとパチリと目配せをしてきたけれどには何がなんだか 全くわからなかった。(変なヤツだ。変態だ)


「この幸村が部下猿飛佐助による無礼、未だ謝罪がすんでおらぬ」

「…引く気はねぇのか、真田」

「武田の武士に二言は無い」


佐助は珍しくも部下らしく幸村の後ろで片膝をついて軽く頭を垂れた。
謝罪も何もしないままではを他方へ遣る訳には行かない、というのである。
自分の言った事は絶対に枉げない、まさにそんな口調でそう言ったものだから、 さしもの政宗も真剣に考え始めたようだ。

そして判決は直ぐに出た。


「ッチ!俺のhoneyを連れ帰りたいのは山々だが
お前みてぇな hardhead を説得してたら日が暮れちまう…仕方ねぇ、帰るぞ。」

「はッ!皆も待っておりましょう」


考え抜いた結果。政宗の中での天秤はやはり、よりも自軍の部下に傾いたようだ。
政宗は思い切り息を吐いた後に潔くの手を離すと、そこらの草を食んでいた白馬にまたがった。

こんなに早く話がまとまると思っていなかったのか、幸村は一変してきょとんとした表情になって 政宗を見た。けれど先程の言葉は嘘ではないようで、帰り支度を佐助に頼んで 幸村は政宗に感謝の意を表した。


「この様に急な願い出を受けて頂けるとは思っておらなんだ。
感謝いたす、奥州筆頭伊達政宗殿」

It is cold and distant。 改まって礼言われる事でもねぇ。」

「しかし伊達殿はあの女子を、その…す、好いておられたであろう」

「俺がいつ諦めたって言った?あの女は俺がいずれ迎えに来る」


と言うことは甲州に参られるのか、そして親方様にお目通りなさって… と少し微妙な気分になった幸村(忠犬サナ公)を放って政宗はやっと馬に乗れたの元に向かった。
馬に乗って視界は上がったけれど、未だに政宗の方が高い。やはり女にしか見えない。


「Hey、準備は上々だな」

「ん?どうしたんだ伊達政宗?馬は交換しねぇぞ、名前もつけたんだからな!」

「どうせ『政宗』って名前付けたんだろ?愛しのhoney…?」

「ん?アレクサンドリアフィンドルスゴビッチ政宗?」


その時ガツン、と体のぶつかる音が二人の乗っている馬から出た。
政宗の馬との馬はどうも気が合わなかったようだ。(付け加えの馬の方は名前が気に障った様だ)両方とも鼻息を荒くして にらみ合っている。すかさず佐助がたてがみを撫でて落ち着けて、もう直ぐ出発する旨をに告げた。


「もう行くらしいけど、何か言いに来たんじゃないのか?伊達政宗」

「おう、その話だ。アンタの名前訊きに来たんだ、教えな」

「実は俺、ミジンコって名前なんだ」

「嘘付け」



政宗の真顔のつっこみには笑った。(天使の微笑みだぜ!)(お前眼科行って来いクソ眼竜!) はその後に名前を言おうとしたけれど、丁度その時になって双方の準備が整ったようで、小十郎は政宗を、 幸村と佐助はを呼んでいた。

はそれで名を言うのを止めて、やって来た佐助に馬の手綱を引かせて進み始めた。
その様子を見て渋々政宗は小十郎の方へを馬を進めはじめる。そうして両者の距離がそれなりに開いた時 は思い出したように政宗の方を向いて口を開いた。(実際に『あ、そうだった』と言った)


だ!伊達政宗!」


政宗はその声に思わず振り返った。


「俺の名前だ!ちゃんと記憶しとけ!それから…」














If you said honey when you met next time, I beat you up!














「!政宗様、あの女…」

「ああ、そうだな小十郎」


(流石は俺の見初めた女だぜ、。)

政宗はまだ声の響いているような錯覚を覚えながら、 既に馬を走らせ小さくなっている其れが消え入るまで愉快そうに見つめたあと、小さく。


「It's next。次に会った時、覚悟しとけよ?…」