「痛っ…」
「馬鹿。じっとしてろってば」
「ッもっとヤサシく出来ネェのかBaby…!」
「お前が言うと何もかもヤラシく聞こえるから不思議だよな
よーっし出来たぞ傷薬……オラオラオラァ!」
「いてぇてててぇぇぇぇぇえ!ちょ、いてぇぇー!
Hey you…苛めて楽しいか!俺を苛めて楽しいか!」
「え?超楽しいけど?涎出そう」
つくった傷薬を傷口に叩き込む。
横から小声で『そんなプレイは望んでいない』と聞こえたが、無視しておいた。
なぜなら、生涯に一度聞けるか聞けないかの奥州筆頭の絶叫を聞いて、
は上機嫌だったからだ。
(いてぇてててぇぇ、って何だ)(天性のギャグセンスに違いない)
「O−uchhhh!」
23 懐いた軍馬で走り出せ
「いやぁ、ホントゴメンな伊達政宗。うちの可愛い奴等が
ちょっとお転婆でさぁ、すぐにじゃれ付いちまう」
「Ha!そりゃあ随分と可愛いPetだ。
もうじき人でも殺すんじゃねーか」
による紹介が遅れた政宗はを除くその場にいた鶏、馬、ひよこ(戦闘力−900)
に総攻撃を掛けられた。蹴られたり突付かれたりで六爪を抜く暇さえなかった政宗は可愛そうな
ことにおよそ10分間そのままで放置された。勿論は
抱腹絶倒しながら縁側で見つめていた。
数分たってから、が三匹に政宗を紹介したが、政宗にはどうしてが
動物に話しかけているのか解らなかった。それもそのはずである。
政宗には動物の声は聞こえないのだから。のそれを理解したうえで
極力動物達と会話にならないような紹介をした。その意図を読み取った鶏と馬は
頷くだけだったが、ヒヨコだけがどうしてそのひとをかばうの、と
異常なまでにに質問をくりかえし、
突付かれていた。(きっと政宗にはピィピピピィピィピー!とかいう
風に聞こえていたんだと思う)(首を傾げていた)
小屋に戻っていく三匹を見送りながら問いかける。
「そんで?まさかホントに俺を迎えに来たワケじゃないだろ?」
「それだ。武田のオッサンは居るか?」
「お館様?多分居ると思うけど……お館様に用なのか」
「ンな残念そうな声音使うなよ…抱締めてやりたくなるだろ?」
「そうか?俺もお前の背骨を折りたいと思ってたんだ、奇遇だなっ」
「Hun…照れ屋は健在ってことかい」(ぎゅう)
「照れ屋じゃな、ちょ、お前!伊達政宗!やーめーろー!」
「Do not move.
イィだろ、久し振りなんだから」
「いやだぁー!イイって片仮名使うな!えろい!」
「ハイハイ言うこと聞けよー?」(ぎゅむむ)
「ひやあぁぁああぁぁ!鳥肌が、鳥肌がっ!」
(ったく、エロいのは一体どっちの声だかな…)
政宗はじたばた暴れるを抱き込めると、武田に一時的な同盟を申し出に来たと語った。
織田が勢力を凄まじい勢いで伸ばしてきている、つまり時期に甲斐、
そして奥州まで手が伸びると判断できる。織田の配下は大大名が多く、
ごく最近は今川が落ちたという話を聞き、こういう経路に至ったらしい。
政宗の口調が真剣になった所為で暴れられなくなったは大人しく
政宗の腕と胸板に挟まれたままで話を聞いていた。
ごく偶に耳に政宗の吐息が当たる。コレは女性からするとカナリのときめきポイントなのかも
知れないが、からすると唯の迷惑でしかない。
(コイツ呼吸しないで生きていけないのかな)
「とにかくお館様のトコに案内するぜ。それでいいな?」
「Thank you!なぁ、もう少しこのままでいいか?」
「お前人の話聞いてた?」
「Ouch!」
の黄金の左手とプラチナの右足が炸裂した。
□□□□□□□□□□
「久方ぶりじゃのう、伊達の子倅」
「そうだな。何時ぶりだ?
アンタが逝っちまってなくてよかったぜ」
「失礼であるぞ、伊達政宗ェ!」
「良い!控えておれ!」
「くっ…お館様…」
「(どんまい幸村!)」
「(………殿ぉ〜)」
悔念遣る方なく座りなおした幸村に小声で話しかけると、
幸村は何を言われたか解っていない様子
だったが直ぐにふにゃ、と笑う。その微笑からマイナスイオンが大量噴射された。
(どれぐらいって滝の傍に居るぐらいの凄さ)
が政宗を信玄の元に連れて行ってからまだそう経ってはいなかった。
丁度良くそこに居合わせたのが幸村と佐助だけだったので、このまま話をしてしまおうと
考えたらしい信玄は、手早に軍事の地図らをしまうと直ぐに政宗を部屋に通し用件を聞いた。
その際何故だかを傍に座らせた。
そして同盟という言葉を聞き、そうきたか、と溢したのが直ぐ隣に居たには聞こえた。
どうやら面倒だとか嫌だとか思っているような口調でもなくて、ほっとする。
「伊達の子倅、同盟についてだがのう。
…正直に言うと手間が省けたわい」
「Hun?どういうことだ?」
「いやな、どこも同じよ。近頃の織田は勢いづいて来ておる。
灸を据えてやらねばならん。ならんが情けなくもこの武田のみでは心もとなく思う。
ワシも…もうじき奥州に使者を使わそうと思っておったでな」
そう言って信玄が見た視線の先には、しまった地図が覗いていた。
ついさっきまでその話をしていたんだろう。がなんとなく
それを見ていると、行き成り頭の上に手が載せられた。重量的に政宗ではないし、佐助でも無い、
信玄の手。顔を上げて信玄の顔を仰ぎ見ると信玄は寛大に笑ってを見返した。
「……を。」
「へ?俺が?」
政宗を信玄の話を聞いてなかったからすると何が自分であるのか
まったく理解不能で眉間に皺を寄せたが。幸村と佐助は別の意味で眉間に皺を寄せた。
そして政宗は目を丸くしていた。何がなんだかわからないはそのまま
頭を撫で続けられる。その間3分。
はその数分の間に幸村たちの眉間の皺に気がついて、その方向をじっと見ていたけれど
佐助はジト目で政宗を、幸村は不満そうに畳を見詰めていて、目が会うなんてことは全く無かった。
「此度の和平、締結したと考えて良いかのう」
「O.K. 仲良くしようぜ、甲斐武田」
「失礼いたしまする」
両領主が仲良くなった辺りで、女官が障子を開けて礼をした。
当然のようにそちらに集中する視線、若い女官は彼等を敬ってか、
恥ずかしがってかどうか解らないが、顔を上げることもなく『お客さまでござります』と
言い、後ろに下がる。入れ替わりに出てきたのはオールバックに頬の傷。
久し振りに見た顔だった。その男は障子の開いた廊下に座して礼を述べる。
「奥州伊達軍、片倉小十郎景綱と申しまする」
「ほぅ、そなたが伊達三傑と名高いあの……入れ!」
そう言われると、小十郎は少し戸惑った様子だったがゆっくりと立ち上がって室内へ入り、
座ると信玄に一礼した。礼の良く行き届いておることよ、と信玄が感心するも早く、
政宗は振り向いて小十郎に話しかける。その表情は
部屋に入って同盟の話を持掛けた時よりもずっと落ち着いていた。
「小十郎、遅ぇぞ、何やってやがった」
「はっ、賊を片付けておりました」
「チッ…あの賊か。片ァついたか?」
「性根、叩き直しておきました」
「Good!さすがは俺の右目だ」
(なんか兄弟みたいだな…)
微笑んだ政宗の無邪気さに一瞬だけ朗らかな気分になっただったが、
次の瞬間には今まで(と言ってもまだ二回目だが)の政宗の振る舞いが
思い起こされ、凄い勢いで顔を左右に振る。
行き成りやったものだから信玄に心配された。
「伊達の子倅、片倉とやら。今夜は甲斐で過ごさんか
折角奥州から出てきたのだから、宴でも開こう」
「Ah−…申し訳無ェんだが、今日はそのまま帰るつもりだ
何せ部下に直ぐに還ってくるっつった手前、ゆっくりしてられねぇ」
「ふぅむ…そうか、家臣のためならば仕方あるまいな
良い領主だのう、はっはっは!」
「Ha!アンタにゃ劣るけどな」
「ふははは、子倅に似合わぬ謙遜を言ってくれる!
うむ!ならば花印を押して、書を残すか」
そういうと小十郎が花印を差し出す。政宗はそれを知っていたかのように受けとる。
流石は右目と左目。シンクロ率が高い。
信玄と政宗は署名し、その上にそれぞれを押す。二枚つくり終わってから、
感謝する、と言うと政宗は矢継ぎ早に立ち上がった。
の腕を掴んで。
「うおぉ!なんだ伊達政宗ー!?」
「殿!」
「なっ、なりません政宗様!」
「Stop!小十郎、そのままだ。
同盟には親善大使が必要だろ?」
「親善大使…それもそうよな。
伊達よ、を連れて行くか?」
「安心しな、直ぐに返してやるよ」
「俺は物じゃねーよ!クソ眼竜!」(ガッ)
「小娘てめぇ政宗様に足上げるたぁいい度胸だ!」
「アァン?テメェはどっちが悪いか状況見て話しやがれ!」
「くっ……」
小十郎は言い負けた!目の前が真っ暗になった!
(反論出来ねぇ…政宗様)←チラ見
(やっぱり出来ねぇ…)
小十郎が言い負けてちょっと落ち込むと、今まで殆ど黙ったままだった佐助と幸村が
口を開いた。公の場だったから黙っていたようだが、もうその必要も無いと思ったんだろう。
姿勢の良い正座から立ち上がって上座に近寄る。
「お館様!」
「何じゃ幸村、そのように激昂して」
「殿を一人で奥州に行かせるのは危険極まりなく存じまする!
片倉殿がそうであったように国境付近には近頃賊も出ると聞くうえ…」
「そうですよ大将!あぶないですって!
ちゃんは大将の娘さんで可愛いから
立ってるだけで人攫いに捕まっちゃいますよ」
「確かにワシの可愛い娘を危険に晒すわけにはいかんが…」
佐助の城主をおだてる攻撃!効果は抜群だ!
(えへへそれほどでも無いよ〜)
「しかしな……よく見ておれ、佐助、幸村」
「さ、行くぞ。Let's go!」
「いーかげんにしろ人攫い!ィやだぁー!」
「何も痛い事ァしねぇよ…You see?」
「No!You should die!」(ぎゅううう)
「痛ぇぇぇっ!傷口だけはやめろ!抓るな!
ギブだ!Give up!おい小十郎!」
「……はは、牛蒡が収穫できたぜ…」
「小十郎ォォ?!」
「ゆー、しゅど、だぁぁぁい!」(ぎゅうううううう)
「O,K.解ったから!手は離すから抓るな!」
「…ワシはなぁ、なら大事無いと思うぞ、佐助、幸村」
「………」
「…」
若虎と猿は言い返せない!口が開閉している!
(旦那!なにか言い返してよ…!)
(俺にも何も言いようが無い…無念でござるぅぅぅ!)
…ということで結局墓穴を掘って奥州に行く事になってしまったは
準備したり着替えたりする間もなく政宗に俵抱きされ、門の外まで連れてこられた。
今ので解るように、政宗が本気を出せばをムリヤリ連れてくることも可能だったのだ。
それが途中から解ったは政宗の何気ない気遣いに感謝はしたものの、
こうやって奥州に行くのは不満ばかりで、ずっと政宗の皮膚を抓んでいた。
(最後はお仕置きが必要か?と言われたのでやめた)
(そんでちょっと痛かったかなと思って謝ったら頬を抓られた)
「殿、たったの三日程でござる。たったの三日、三日…なんと長い…」
「幸村、矛盾してるぞ?」
「いい?早寝早起き、油断大敵、煩悩抹殺だからね!ちゃん?」
「三番目は特にお前に言いたい」
「、少しだが持って行くとよい」
「つまりはお土産ですよねお館様」
「ううう殿ぉ…お守りできず申し訳ない…」
「いや、いいって。ほんの三日だろ、三日だよ」
「ちゃんに三日も触れないなんてつらい…」
「だから三日だって。いち、に、さん、日だって
あーもうじめじめしやがって!今生の別れじゃねーんだぞ?」
「じゃあ…接吻して?ちゃん」
「某も…」
「2人して調子に乗るなよ?」
ごつん、と頭と頭がぶつかる音が響いた後、信玄の大きな笑い声が響いた。
いってらっしゃいの儀式も終わって、さぁ政宗と馬に乗ろうとする
(仕方ないだろあいつ等馬2匹だけで来てんだもん)とき、
屋敷の方から蹄の音がして振り返ると、あの馬(言うの超面倒いけど
アレクサンドリアフィンドルスゴビッチ政宗)が駆けてきているのが目にはいった。
「馬ー!こっちだー!」
「おお、に懐いておるのう。愛いのう!はっは!」
「厩で垢抜けておった駿馬でござるな!殿の馬でござったか」
「あれ、あの馬ってこの前三河に置いてけぼりにした馬じゃなかったっけ」
そ れ は 忘 れ て く れ!
「お前よくわかったな」
『姉さんの足音が聞こえたんです
それで、どこかに行くなら私も一緒に行きたいって思って』(カポカポ)
「他の二匹は小屋の中か?」
『はい。あの2人は着いて来られないので、奥さんといっしょです。
だから姉さんを独り占めできるんだぞって自慢してきました!』(ぶるるーん)
(可愛いよ!この敬語馬チクショー)
馬はの所まで走り寄ってくると、然して息も上がって無い様子でに顔を擦り付ける。
が鼻面を撫でて話しかけると同じようにして小さく返事が返ってきた。
ウキウキとした様子で乗って、と促す馬に乗り、旅路の始まりにすっかり視界の下に
行った武田組を見た。信玄はニッコリと笑って、幸村は涙目。
佐助は心配すぎて目が充血している。(こわっ…)
「いくぞ!遅れるなよ」
「おうよ!」
は意気揚々と蹄を鳴らせた。(ていうかやっと片倉サンは俺を思い出してくれたみたいだ)
実際に何の準備もなし、その上荷物も持たないという不安や不満はあるものの、馬で何処かに行くのは楽しいので
嫌ではない。それに奥州と言えば他国。この前三河に行った時もそうだったが
他の国には他の国なりの活気がある。食べ物も美味しいし、景観も良いし、
戦国BASARAの裏側を見ているようで得をした気分だ。
「そんじゃな〜!お土産楽しみにしてろよ!」
(てなことで摩利支天は奥州にお邪魔しに行きましたとさ!)
(わたくしのもとにもあそびにいらしてください、)
(うわ、今なんか聞こえた?!テレパシー…!?)