俺は基本的に現実主義者だ。リアリティズム派だ。
だから断言してやる、コレは夢だ。どこからどこまでが夢かなんて関係ないってことにしておこう。 いいか俺よく聞け俺。これは絶対に夢だ。
(威鞘なんてケ・セラ・セラだ)

そうじゃなけりゃあ俺がこんな焼け野原に居るわけ無いだろ!!







02 俺が“居る”世界







は煙立つ野原の上に一人ぽつんと突っ立っていた。

どこか遠くから戦の野太い咆哮が聞こえてくるような雰囲気のそれだが、 今のにはそんなことを気にする余裕は甚だなかった。 動転しきった脳内にはずっと夢だ夢だといい続けるサイレンが鳴響いていた。 まだ混乱の残る頭で辺りを見回せば明らかに先ほどの所は違う何処か、または『別の世界』へ来たことがゆうに想像できた。

本当に戦乱…つまりBASARAの世界にいるのだとすると?
あの威鞘とかいう変態霊にそんな力があったとでも?
そういえばバナナでどう戦うんだっけ?

考えれば考えるほどに疑問が膨らんでいく。は広い焼け野原でひとり、スーパーのオバサンよろしく 腕を組んで、ふむ、とちいさく唸った。 見渡す限りの虚空と雲がを馬鹿にするかのようにゆっくりゆっくり動いていく。 はそんな様を眺めながら、ぼんやりと家に帰り着くまでの旅費について考えていた。 この荒野に来てから現実逃避しがちで、どうも困る。


「ココは誰、私は何処、ってか…」



丁度そんな時だった。

小さく風を切る音と共にちくりと首筋に痛みが走り、はつい息を呑んだ。 小さいころオイタが過ぎて射されてしまった蜂や虫のそれとは違う、あえて言うならば 鋭い刃物が人体を滑らかに切り裂くような、鋭い痛み。

脳で『危険だ』と判断する前にはじゃがみこんでいた。 そして恐らく後方に居るであろう相手目掛けて足を繰り出す。案の定それは相手の足元をすくい上げ、 がしゃりと妙な金属音をたてて横倒しにする。 同時に相手の手に握られているエモノも蹴り落としたのだが、 そこで相手の見てくれを見てはふと思った。

すっぽりと頭を覆う兜 掲げられた背の旗には四つの『菱形』

何を見たか理解した時、は一瞬眩暈がした。
理由はいろいろと有ったが、最高の要因はいま対峙している相手の身なりにあった。 その姿には充分見覚えがあった。ブラウン管越しの世界で、何千何万と斬ってきた あの武田の一般兵が、まさに其処にいたのだ。


「おのれ貴様…何処より表れよったか!」


相手は1オクターブ程声を上ずらせて怒鳴り散らした。尻餅をついても なんとかの元にある槍を取り返そうとしている姿は、正にゲーム内で兵が戦意を喪失したそれだ。 『ひぃ〜勝てねぇ』とか言ってる、あの。

怯えている、と直ぐに理解したはできるだけ温和にことを済まそうと、笑顔で問いかけた。 (勿論相手の槍は足で踏んだままだが)今はこの現象に最もな理由をつけるよりも、身の安全の 方が大切だ。


「えーと 落ち着けよ 俺は怪しい者じゃない」


うっわ嘘臭ェな今の俺って。

はそう思いつつも、続けて此処がどこか教えて欲しいな、と表に張り付いたような笑顔で 言おうとした。だが、その声をさえぎってボォォと音が鳴り響いた。の記憶が確かであればこの音は、法螺貝の音だ。

はっとして音の根源を見れば、其処には(ブラウン管の前で)お馴染みの法螺貝兵の姿が確かに確認できた。 そしてその法螺貝兵から、(待機していたのかいつの間にかそこに居た)数名の法螺貝兵へと音は伝達していく。


ゲームの時は視界に入らねぇ限り人畜無害なくせに!


声に成らないの焦りは完璧に無視の方向で、ブオブオと木霊のように音が連鎖を見せる。 乾燥した空気はやけにその音を響かせて、 は何とかしてこの連鎖を止めないといけないと思ったが、既に時は遅かったようで。 暫くもしないうちに遠くの方から赤い点がチラチラとみえだした。間違いなくあれは武田の増兵部隊だ。 ゲームでみた物よりもずっと熱気に満ちているように見える。


「貴様ももう仕舞いよ」


前方からかけられた声にふと現実に戻りながらがらも、は視線を元に戻した。そこには未だ尻餅をついたままの 武田兵がいる。だがその口元には完全に有利に立ったものが見せる、驕りの笑みが見えた。 無性に腹の立つその笑みをみて、は口を尖らせる。


「俺が何したってんだ 此処に居ただけだぜ?」


意味わかんねぇ、と愚痴りながらが足で槍を蹴り起こして自分の手に持つと、 武田兵はやはり、馬鹿にしたような嘲笑を浮かべながらに話しかけた。 (ムカつく顔の兵だ、皆こんな顔をしていたのだろうか)(だったら一万人斬りもそんなに悪いことじゃないな)


「戦というものを知らんのか?敵武将は殺すまで」

「…てきぶしょう?何の事だ」


は全く訳が分らなくて聞き返したのだが、武田兵はキョトンとした後に 声を上げて笑いだした。(しかも座り込んだままなのでマヌケにも見える)

しかしその口から出た言葉はの想像できるようなことではなかった。


「独眼竜が部下は臆病者!己を偽っても生き長らうか!」

「…はァ!?俺が誰の部下だって?」


コメディーやギャグ漫画なら目が飛び出るような衝撃がを襲った。

独眼竜といえば奥州の大勢力(BASARAのイングリッシュクレイジー)伊達政宗 の異名ではないか。それだけでも充分な驚きだというのにまさかの『独眼竜が部下』発言。 つまり今はその独眼竜の部下の武将であると見なされて、攻撃対象になっている、ということだ。 そうとなれば、誤解を解かねばならない。はいきり立って、弁解を始める。


「ち、ちょっと待てよオイ!俺はアイツの部下じゃな…」


最後に『い』と言おうとして口の形が変わったぐらいでは威勢のいい声を聞いた。 振り返れば僅か先(おそらくはほんの100M先ぐらい)にはアカ・赤・紅・一色。 的となっているでなくともこの光景には唖然とするだろう。


「おいおい待てよ侍さん、俺もしかして死んじゃうとか?」

「『もしかして』であるものか、貴様の死は絶対よ」


そっか俺もう死んじゃうのかあははは、と薄ら笑った。

考えてみれば今日の朝に祖母にお使いを頼まれたこと自体が悪夢の始まりで、 それからあの神社にいったことでもう死は確定したのだろう。生憎首の傷は痛いし、どうも夢では ないようだ。こうしてやけに冷静に考えられる自分が凄いとさえ思う。

は昔から負けず嫌いだった。

だからこそ女々しい外見に産まれついても一端のガキ大将のようにして 小学中学高校と、義務教育の浪を乗りこなしてきたのだ。喧嘩して作った傷はすくなくない。 それよりも相手に作った傷の方が多いのがの自慢でも在る。

ようするにはナヨナヨしくみえていても随分と血気が盛んな人間であって、 こういう危機的状況下におかれて何もせずに運命に身を任せる程良く出来た人間ではない、ということなのである。

強く槍を握ると目と鼻の先に来ている武田兵へと視線を投げた。 体中の血が8分の興奮と2分の恐怖で噴き返るような錯覚と、俺は本当に戦国に来たんだ という実感はその時になって鎌首をもたげたのであった。


「は!上等じゃねーか、死んでも後悔すんなよ?」



















が紅い大群に向かっていって既に3,40分経過していた。
キン、と耳に残るような金属音が響く。それはの持つ槍と武田兵の持つ槍や剣やらがぶつかり合う音で、清清しいまでに晴れ渡った 天道のもとではまるで一つの交響曲のようにさえ、聞こえる。

『死んでも』といったもののは人を殺す気なんてさらさらなかったし、よもや 誰か殺してしまうことなんてもってのほかであった。とにかくは誰も傷つけないように、と 気を使って槍を振るうけれども、思いのほか長槍は扱い難く、多分数人の皮膚をかすっているんじゃないだろうか とは兵の繰り出す刃をいなしながら思った。


「あーもう、アンタ等いい加減退けよ!」


汗が一筋、の頬を伝う。じりじりと射るが如くの黒髪に降り注ぐ日射光線は 全くその勢いを弱めようとはしない。は熱射病になりかけてガンガンする頭を今すぐにでも冷やしたい 衝動に駆られながらも声を荒げたが、返ってくる反応は全くの否定ばかり。


「貴様こそ観念すべきであろう!」

「武田の刀の錆となれ!」


こンの天邪鬼どもが!いてこますぞ!


そう口に出しそうになってキッと口元を結び、は近づく敵を一掃した。 結構な力が要るはずのそれを軽々とやってのけた自分にはふと疑問を抱えたが 、今更そんなことを気にしている場合ではない。(きっと火事場の馬鹿力だ) 掃いて捨てるほどの数の武田兵が ザワザワと360度視界を覆っているのだから。


「――――もういい、逃げる!」


そう判断したはある程度の距離を持って槍の先端を勢い良く地面に刺すとその反動を利用して高く上に舞った。 『おお』と声が響く中では武田の群れから大きく離れた地に着地する。 (俺は体育は得意なのだ!)

兵の輪から抜け出したは後の群れを一瞥してしてやったりとほくそ笑んだ。


「やったね脱出成功ォ!良くやった俺!」

「へぇ 逃げ切れたと思ってンだ?」


やっとあの大群から逃げ切れる、と輝かしい笑顔で自己を褒め称えながら が立ち上がったときのことだった。

視界に広がる光景には口が半開きになった。

ここが武田領なのだとすると『コレ』は別にありえない事ではなかったのだが自体、 その可能性は黙殺しておきたいものに変わりは無かったのだ。


しかし視界に広がるのは軍隊のような迷彩柄。


こんな服装をしているBASARAの人間なんて一人しか思いつかなかった。しかもあの声。K安ヴォイス。 もう今対峙している相手は確定していた。蒼天なんたらのあのS.Sこと猿飛佐助なのだ、本物の。

大吉の入りまくったおみくじ箱から入ってすらない凶をひいたようなものだ、とは今までの人生を 振り返りながら思った。どうでもいいとき(例えば町内会の懸賞とか)に運が使われていたのならば過去に戻って 自分の行動を自粛してやりたいとさえ思った。

対する佐助氏本人は腕を組んで顎に手を添えたまま、相手の姿を上から下までじっと見たあとに 戦国らしからぬ軽い表情でに話しかけた。


「アンタ変わった服装してるね それにおn」

「ちょ、待ってマジでストップ!んで俺の話聞いて頼むから!」


佐助が話し始めた時の中で『お前は既に死んでいるの法則』(話が終わった瞬間には殺されているという法則) が浮かんでは消え、消えては浮かんでいた。勿論、北○の拳の影響である。 そのため必死で言葉を発したのだが、そのなかに『ストップ』が入ってしまった のはまったくの誤算だった。

ぽかんとした佐助の表情を見ては自分の口を覆った。ここでの異国語は独眼竜の 部下であることを誇示する手段に過ぎないのだ。


「ほぉ。部下も異国語話せるんだ、格好いいじゃない」

「否、そうじゃなくって」

「は?何が違うってんのさ」


は目を泳がせた。 そして何が違うといわれてここが違うと立派に証明できることは無かったのだが、 まず否定しておくことにした。(先日見た時代劇で『沈黙は肯定』と言っていた為だ) 恐らくは先ほどの一般武田兵よりも、こちらの方が落ち着いている分、話が通じるような気もした。


「俺はあの伊達軍?とかじゃなくて、つか兵士じゃなくて」

「あーそうなの。嘘くせーなぁ」

「だから嘘じゃねぇってんだろコノヤロー」

「はいはい、わかりましたよっと」


信じちゃいねぇくせに、とが呟くと佐助は当然。と 嫌味なほど笑顔で返した。本当は30%ほど逢えて嬉しいような気がしていたが そんなのゲーマー魂もコンマ2秒でとんでいった。

今はなんとかしてこの 憎たらしい笑顔をあのかゆいところに手が届かないもどがゆさに歪ませたいと思うばかりである。 (人格占いの『すこし危ない人☆』という結果にも頷ける)


「んじゃ、ちょっと失礼」


そのとき目の前にいる佐助の声が後ろからしたことには はっと気付き後ろを見た。が、既に遅く。 前方と後方にいる同一人物の片方、つまり今まさに自分の後ろに立っている佐助に つかまってしまったは数日前のゲームプレイ中の佐助の発言を思い出した。


『忍のやることさ。なんでもアリだよ』


しかし本当に何でもアリだな…!!


しかもちゃっかりとクナイが首に当たっている。そのうえがっしりと掴みこまれていて自由に動くことも侭ならない。 (屋上で犯人と人質が取るような体制になっている。) は三十秒ほど大人しく捕まっていたかと思うとぐるりと首を上に上げて頭上の明るい橙の髪の男に視線を向けた。


「ね、本物どっちなワケ?」

「アンタをつかまえてんのが正真正銘猿飛佐助だよ」

「じゃあ正真正銘の猿飛佐助。首絞まってんですけど」

「あ、わかっちゃった?これね、わざとなのよ」

「いや本当にさ、俺苛めて何が楽しいのアンタ等」

「苛めちゃいねーよ。まー俺は役得だけど?」(本体)

「あ?お前は捕まえてればいいんだろ」(影の方)


前後から同時に声が聞こえてきてが気味がわるそうに眉をしかめた。 その間に佐助がダミー佐助に『おまえちょっと黙ってろよ』と 言ったのも『アンタが黙ってたらどうよ』と言い返されたのも充分に聞こえていた。 (口げんかするんだな、と思った。)

ちょっと落ち着いて周りを見ると先ほど山程いた武田兵はほんの数名ほどになっていた。 俺様が来たから皆安心して他に行ったんじゃない?という佐助にはああそうか、と 意味も無く納得する。(だって佐助って強いんだよな?)

実は佐助の方が背が高いので良い日よけになっているのだ。ひりひり痛む頭の頂点を思うと、今日のお風呂は 恐ろしいことになりそうではもっと日光に当たらないように佐助を盾に頭頂部を隠す。

その行動に何を勘違いしたのか佐助(本体)は『なにさ、積極的だねぇ』と言ったけれど はその瞬間だけ鼓膜が弾けとんだと言う設定を自分に催眠した。


「おいおい無視は酷いんじゃねーの?」

「…暑いし苦しいし暇だし。もうやンなってんのよ、俺は。」

「それだったらもうすぐ真田のダンナが来るから。待ってな」

「あの真田幸村?(破廉恥と)騎馬隊で有名な?」

「そうそう、よくご存知で。上司に手柄は上げて欲しいモンでしょ」

「猿助って以外に上司思いなのな」

「そーなの。武功上げて偉くなってもらわないと給与アレだしさ」

「だよなぁ武功あげ、て……て?」


ぴーひょろぴぃ。 伝書なのか野生なのか、トンビの鳴き声が暫しの沈黙を飾った。 世間話のようなものをしていた(未だに被拘束中)は佐助の口から さも当然の様にして流れ出た言葉に笑顔を固まらせた。


「なァ、武功ってもしかして?」

「ん?アンタだろ?」(にこ)

「俺があんた等の敵だって?」(にこ)

「まァだシラ切るつもりなのかよ」


とたんにス、と懐疑的に細められた眼を見て、もたまらず溜息をついた。 最初から、話はできる相手だとは思っていたが、理解してくれるような相手ではないだろうと思っていた。 しかし孤立無援の。少しの希望に賭けてみたくなったりもするのだ。 なんとか話を曲げたくて、佐助を仰ぎ見る。しかしその行動はある声によって遮られた。


「ぅおおぉおおるぁあああァ!!!」

「!!何の声だ」

「ウチの旦那だよー」


「天・覇・絶・槍!」


「旦那ってことは…」

「ん、そーゆーこと」


真田源次郎幸村、此処に見参!
伊達軍武将殿とお見受けいたす、いざ尋常に勝負!」


野生のポケ○ンの如くして元気に草むらから飛び出してきた紅い獣は 『真田赤備え』の名に恥じぬ赤色に身を包みこんでいた。 は佐助の腕越しにそれを見ていたが、流石である。 戦いに身を構え肩を上下させるその姿は、見ているだけでもどこか圧倒されるような気さえする。


「佐助!伝達ご苦労で…」


ひとしきり決まり文句(だと思う)を言ってやっとまともに此方を見たその獣こと真田幸村 だったが、 眼前に広がる二人を見たとたん貌を真っ赤にして口を酸欠の金魚よろしく閉開させた。 最初の覇気は何処へやら逃げ腰になり、何かとてつも無く見てはならないものを見た様な 表情で佐助へ視線を向ける。


「さささ佐助ェー!戦場でかの様な行為…如何様な考えにあるか!」


の直ぐ後方の佐助、つまり本体の方は深い溜息じみた声を出した。 それと同時にボフンと役目の無くなった分身の方が霧散していく。 佐助は既に慣れっこなのだろう。大概疲れている口調で、しかも物分りの悪い幼子に言うようにして、 真っ赤になっている自分の上司に向かって話し始めた。

上空にはやはり伝達鳥だったのか先ほどのトンビらしきものが飛んでいる。 主人の下に帰りたいのに、思いも寄らぬハプニングが起こった為に、 ずっと上空をクルクルと旋回したまま微妙な修羅場に対面した 三人を見下ろしていた。

確かに遠巻きに見れば背から抱きついているようにも見えるのだがその点にこの二人は気付いていないようだ。


「違う違う、旦那、この子が」

「違う違う俺はそんなんじゃなくて」

「違うでしょアンタは伊達軍の人間でしょ」

「いやだから違うって俺は現代社会に生きるゲーマーで」

「問答無用ォーう!この期に及んで言い訳など…」

「ああもう聞いちゃあいねーなこのヒト!」







「この戦中に女子と逢瀬…は、破廉恥であるぞーーーッ!」







は最初『女子』という言葉を聞いてそれが一体だれのことを指しているのか 全く分らなくてキョロキョロと周りを見回した。(あと、生破廉恥が聞けてちょっとにやけた)しかしここら界隈にはどうやら 自分と佐助と幸村しかいないことにやっと気付いてやっと語意が分ったのだった。

つまり『女子』とはを指した言葉であって、更にはその自分とGNS (グレート忍者佐助)と戦火たぎる中逢瀬に勤しんでいる、という設定を付けられている ということなのだ。

ああ、こんな気分は中学の時嫌ってた理科の先生から毎日のように『さん』と 呼ばれていた時以来だ、とは思った。(確かあの時赤ペンをへし折ってしまって 手が血まみれ宜しくなってしまったのだ)


「オイコラ真田幸村ァァー!」

「な、なんでござろう!(女子がなんと言う口を!)」

「耳の穴かっぽじってよォく聞きやがれ!猿助!そうそうお前もだ!
ったくどいつもこいつも見かけでヒトを判断しやがって…
俺はおぬ、お、おなごじゃねぇ!

「お、おぬ?今なんと?」

「うっわーまさかの単語で噛んだ…!」

「うるせーお前佐助コノヤロー!」


が言い馴れない言葉に意味不明なハズカシさを感じて、 、幸村がの言葉遣いにショックを受けた時のことだった。

遥か遠く。恐らくは200Mぐらい先の所からどぅん、と地響きにも似た爆発音らしき物が響いた。 土煙に曇るその景色にはも佐助も幸村も言葉をなくして其方の方を見る。

この時は逃げられたはずなのだが、ちょっとしたデジャヴに身を固めた。 テレビの前に正座して電源を入れれば最初に出てくるあの動画。ステキなBGMにのって 戦国の武将達の舞う、戦国BASARAのオープニング だ、とが気付くのにそう時間は掛からなかった。


「何事にござるか…!?」


不審気に二槍を持ち直す幸村を尻目にはオープニングを再度思い出していた。 あのオープニング。確か伊達政宗が真田幸村に衝突して二人で白熱して…そうだ、大爆発だ。

あの二人は衝突してその瞬間に核爆発にも似た大爆発を起こしたのだ。 は今にも進まんとする幸村を見遣った。(なんとも熱く燃ゆっている!) そうしているうちにも200M先の何かは煙を立てながら突き進んでくる。

美しいがまでに冴え渡った青空には大柄なトンビが一羽。を取り囲むのは二人の 婆沙羅者。そして前方には(もうはっきりと見える)伊達政宗の姿。

に残された時間は僅か数秒だ。